始まる前の話

彼は細身だけど、肩ががっちりしている。

私はその肩をいつも後ろから眺めるだけだった。

憧れの先輩。


今はその隣を歩いている。

その肩に抱かれることもできる。


手を繋ぐ。彼の手は繊細なイメージとは違って、

私の手がすっぽり収まるくらい大きい。


二人でこれから何しに行くの、って過去の私がビビって聞いちゃいそうな相手。



仕事は几帳面なのに早くて、物腰は柔らかい。

人に頼むことがうまくて、、私は気づくといつも期限付きの大量の雑用を任されていた。


ほんとに大量で泣きそうになっていた。

育休明けだったのに、なんだ、この部署はと思うくらい。

彼は、当時は知らなかったけど、資格のために勉強していたから、私より早く帰ることもあった。

ええー!って思っていた。


一生懸命にやっていると、

大した仕事じゃないから、といわれ、ますます落ち込む。。

今思えば、彼なりに、私が追い込まれないようにとフォローしたつもりだったのか。


いや、自分が雑用を押し付けた罪悪感を感じたくなかったからだろうな。


そして、小さな声で、

「思わせぶりはいけないよ」

「デートしたい」と言う。


今のは本当に先輩なの❓

ハッとして顔を上げると、彼はもう横を向いて別の仕事をしている。


飲み会では、彼は女性ととても距離が近かった。

彼は、私の隣には絶対に座らなかったし、私もそうしていた。嫌われているんだと思ってたから。

でも、彼が私のことを見ていることに気づいた時、それが何故か怖くて。

ずっと、彼が怖かった。


おつきあいを始めてからも、冷淡な部分が見え隠れして怖かった。

何が目的なんだろう❓

私を陥れようとしているのかなあ❓と考えることもあったけど、、、( ´∀`)


思い返すと、

彼は、私に冷淡な態度はとらない。

会ったときは愛玩してくれる。


彼に、始まる前のことを聞いてみても、「んー、好きになっちゃったんだもん」しかいわない。


心の移り変わりを聞いてみたいなぁ。